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2017年08月17日

浦島太郎、今昔・・・

    浦島太郎、今昔・・・





 ”浦島太郎が竜宮城で楽しく過ごし戻ってきたら、地上では永い
年月が経っていた。周りにはもう太郎の知っている人はいません”

 小さい頃、寝る前によくオヤジのおとぎ話を訊いた。
 濃い枯れ草色になった古い蚊帳の中で、オヤジは横でボクが寝付く
まで話を訊かせてくれた。いくつかの物語はもうストーリーをほとんど
覚えていたが、毎夜、今日は”白うさぎの話”がいい、”トラと雨もり
の話”がいい、とリクエストした。
 楽しい話では眼が冴え、怖い話ではふとんに顔をうずめていた。
 この”夜のイベント”は物心ついた4、5歳から、たぶん小学3年生
頃まで続いていた気がする。


 そして自分が”オヤジ”になった。
 だがマイホームに子供部屋があり、息子におとぎ話をする機会は
ない。それでも記憶に残るオヤジの役割を受け継いで、いつのまにか
中学2年生になった息子に”おとぎ話”をアレンジして訊かせた。

 夕食時、先に食事を終えた”オヤジ”はまだ食事中の息子に、
「なあ、アインシュタインの相対性理論て知ってる?」
「はあ、何それ? あっ、でも何か聞いたような気がする」
 最近親子の会話が少なく反抗期っぽい感じもしたけど、まだ、
素直さはあるな、うん。
「もし、光速に近い宇宙船に乗って、宇宙に飛び立ったら・・」
「うん・」と言いながら、息子はオカズに箸を伸ばす。
「宇宙船に乗っている人は地球より時間が遅く進むんだよ」
 訊いてるのか訊いてないのか、このあたりまでは食事をしながら
耳を傾けているってとこかな。
「もし3年宇宙旅行して戻ってきたら、地球では30年経ってるっ
てことにもなるんだよ」
「ふ~ん、そうなの」
 食事を終えた息子がこっちを向いた。
「それは”ウラシマ効果”といって浦島太郎の話からきたものだよ」
 ちょっとノッてきて、このあたりから”オヤジ”の威厳が―。
 だが息子が思いがけなく切り替えしてきた。
「じゃあ、さー、お父さん宇宙旅行してきてよ」
「えっ!何で?」
 意表を付かれ、さらに息子の真意が掴めず、多少動揺する。
「だって俺が地球に残ったら、歳取るの早いんでしょ!」
「うん・・そうだよ」
「だったら、お父さんと同じ歳になるかも知れないよね」
「まあ、そういうこともありうるかな」
 そこで息子は目を輝かせて、
「だったら、今より男同士いろんな話ができるじゃん!」 
 いやはや、反抗期だと思っていたのに・・ウレシイネ!

 やっぱりどんな形であれ親子には会”話”が必要だ。
 ガンバレ、男の子! ガンバレ”オヤジ”!




            

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