うちなー芝居 in Movie
僕が初めて映画を観たのは小学校一年の時、流行りの任侠モノ
だった。当時、家庭にテレビはほとんどなく、映画はうちな~芝居と
並んで娯楽の王様だった。
ただ久米島ではその映画も、常時観れるわけではなく、正月など
特別な日や学校行事の鑑賞会だけだった。そして旧盆には、特別に
うちなー芝居とセットで観れる。
そして僕のお初は、そのセットの時―。
◇
今日は旧盆の中日。
兄に連れられてきた球邦館の前には、もうたくさんの人が並んで
いる。夢にまで見た映画―。カラーででっかく描かれた入口の看板に、
僕の胸ははちきれんばかりに高鳴る。
まずは芝居から、ふ~。
会場は泣き笑いで盛り上がっていく。僕も同い年位の少女の
役者を目で追った。まあ、芝居は前にも観たことがあるから、
”ふん、ふん・・だいたい似たような内容だな”、気持ちはもう先へ
飛んでいる。
芝居が終わり、休憩時間時間を挟んで、いよいよ映画だ。
ざわざわしていた会場が、暗転するやいなやシーンと静まり返る。
ストーリーが進むにつれて、スクリーンに引き込まれていく。血が
飛び散るシーンはもう大変、手に汗、身体は硬直した。
時間が経ち、少し落ち着きを取り戻してきた僕、
「はは~ん、分かったぞ!」
カシコイ頭の思考回路で描き出された映画の正体・・それは―。
さっきまで芝居を演じていた役者が、もう一度スクリーンの裏で演じ、
それを後ろから映し出している。
「何だ、そっかー!」
上映が終わって、もう一度舞台挨拶に出てきた一行の、少女
『映画スター』に・・・僕は恋をした。
◇
モノの足りない分をゆめで補っていた時代、セピア色の心の
スクリーンには何が映ってる?
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