うちなー芝居 in Movie

YUU

2014年07月03日 13:07

    





 僕が初めて映画を観たのは小学校一年の時、流行りの任侠モノ
だった。当時、家庭にテレビはほとんどなく、映画はうちな~芝居と
並んで娯楽の王様だった。
 ただ久米島ではその映画も、常時観れるわけではなく、正月など
特別な日や学校行事の鑑賞会だけだった。そして旧盆には、特別に
うちなー芝居とセットで観れる。
 そして僕のお初は、そのセットの時―。


                 ◇


 今日は旧盆の中日。
 兄に連れられてきた球邦館の前には、もうたくさんの人が並んで
いる。夢にまで見た映画―。カラーででっかく描かれた入口の看板に、
僕の胸ははちきれんばかりに高鳴る。



 まずは芝居から、ふ~。
 会場は泣き笑いで盛り上がっていく。僕も同い年位の少女の
役者を目で追った。まあ、芝居は前にも観たことがあるから、
”ふん、ふん・・だいたい似たような内容だな”、気持ちはもう先へ
飛んでいる。

 芝居が終わり、休憩時間時間を挟んで、いよいよ映画だ。


 ざわざわしていた会場が、暗転するやいなやシーンと静まり返る。
ストーリーが進むにつれて、スクリーンに引き込まれていく。血が
飛び散るシーンはもう大変、手に汗、身体は硬直した。


 時間が経ち、少し落ち着きを取り戻してきた僕、
 「はは~ん、分かったぞ!」

 カシコイ頭の思考回路で描き出された映画の正体・・それは―。
 さっきまで芝居を演じていた役者が、もう一度スクリーンの裏で演じ、
それを後ろから映し出している。
 「何だ、そっかー!」

 上映が終わって、もう一度舞台挨拶に出てきた一行の、少女
『映画スター』に・・・僕は恋をした。



               ◇



 モノの足りない分をゆめで補っていた時代、セピア色の心の
スクリーンには何が映ってる?



     


                 

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