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2010年12月10日

「はやぶさ」と「あかつき」

    「はやぶさ」と「あかつき」



 ―金星探査機「あかつき」、金星周回軌道投入失敗。
 12月8日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が上記内容のコメントを発表した。「あかつき」には今年6月に7年の歳月をかけた小惑星イトカワ探査から帰還を果たし、11月には帰還カプセルに入っていた微粒子のそのほぼ全てが地球外物質でありイトカワに由来するものと発表された、探査機「はやぶさ」に続く快挙の期待ががぜん高まっていたのだが・・・。

 まずは「はやぶさ」と「あかつき」の探査目的を簡単に触れておこう。
 地球はいつ、どのように出来て、どのような姿をしていたのだろう。生命が生まれたのは地球だけなのだろうか。大小さまざまな惑星をもつ太陽系は銀河系の中で特別な存在なのか。「はやぶさ」による小惑星イトカワの探査はこのように地球の起源を探るのが主目的であるのに対し、「あかつき」は地球の未来、行く末を示唆する手掛かりを探るのが主目的だ。金星はその大きさや太陽からの距離が地球に近い惑星ということで昔から「地球の兄弟星」と呼ばれてきた。ところが実際には高温の二酸化炭素に包まれ硫酸の雲が浮かぶ、地球とはまったく異なる環境だ。なぜそうなったのか原因がわかれば気候変動を解明する手がかりが得られる。つまり地球環境を理解する上で最も重要な探査対象、加速度的な『地球温暖化』の未来が金星という訳だ。

   
     「はやぶさ」と「あかつき」
 


 今回残念な結果に終わったが「あかつき」は現在太陽を周回する軌道に入っており、6、7年後に再び金星に接近し軌道再投入のチャンスがあるというので期待したい。それにしても宇宙におけるミッションがいかに難しいものであるか、そして改めて「はやぶさ」の地球への帰還やその成果が奇跡的なことだったかが分かる。今一度「はやぶさ」の偉業を振り返ってみよう。

 ―奇跡の中身は大きく分けて三段階。
 まず第一段階は、太陽の形成時の情報を保った状態の、より小さな小惑星に探査機を飛ばすことは至難の技であるということだ。イトカワまでの距離は宇宙規模ではすぐ近くにあるが実際には地球から3億km離れている。例えれば地球がスイカくらいの大きさだとすると月は10m先にあるソフトボールくらいの大きさで、長さが550mほどのさつまいも型のイトカワは5km先にある10万分の1mm程度の粒でしかない。その一粒を探し当てるには、探査機は地球を一周して10mm以内の元の位置に正確に戻る精度が必要となる。第二段階は「はやぶさ」をイトカワに着陸させ、表面の岩石を採取して持ち帰る「リターンサンプル」という作業の難しさだ。アポロ11号の月面着陸のような有人探査と違い、無人探査はすべて予測されたデータに基づいたコンピューター操作だ。ただし不測の事態では地球から片道10数分かかる指令で行われる。実際にその不測の事態が何度も起こっている。そして最終段階は地球への帰還の困難さだ。イトカワからの脱出速度は引力の関係で月の秒速2kmに対して秒速15cmである。これはイトカワの表面でちょっとでもジャンプしたらたちまち宇宙空間に飛び出してしまうことを意味する。イトカワを離陸し地球帰還への軌道を確保することは気の遠くなるようなミクロの計算とそれに準じた正確な自動操作が要求される。
 詳細は省くが、エンジントラブルなど幾度と危機的状況に陥りながらその都度回避し、何はともあれ「はやぶさ」は我々に人類史上初めて小惑星からの贈り物を届けてくれた。


 「はやぶさ」が使命を全うし帰還した地球では、相変わらず至る所でキナ臭い事件や紛争が頻発している。人間はおろかで、子供の頃は天を見上げ夜空の星や宇宙に夢を馳せるが、大人になるにつれ足元ばかりを見るようになり、挙句の果ては自分のいる場所が狭いと争いをする。科学の発展も道を間違えると、奇跡の星である地球を人類自ら破滅の道へと導いていくだろう。それは「あかつき」が探査予定だった金星のデータも必要としないスピードで。地球所在日本国でも、よもや事業仕分けで「あかつき」の失敗を取り上げ、「宇宙に探査機を飛ばす必要があるのですか?」と、大人の論理で子供たちの眼差しを足元だけに向けさせるようなことはないだろう・・たぶん。子供たちの夢への投資は地球の未来を救うことになるのだから・・・。










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Posted by YUU at 06:55│Comments(0)コラム
 
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